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木造住宅の寿命は30年?! 数千万円の建て替え費用の回避術を建築士が伝授

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2016.03.03

住宅の購入を検討する際に気になるのが、その家には何年間住めるのか。つまり、住宅の寿命ですよね。
住宅の寿命でよく話題に挙がるのが、日本の住宅寿命は短いということ。
「日本の木造住宅の寿命は30年」という情報を聞き、不安を覚えたことがある方も多いのではないでしょうか。

本来の住宅の寿命を理解しておくと、将来的なリフォームや建て替えの計画を想定できるようになります。
そもそも、その家に何年くらい住めるのかがわからなければ、何千万という大金は出せないですよね。

そこでこの記事では、木造住宅の寿命が30年と言われる背景と、実際のところは何年住めるのかを明らかにしていきます。
また、木造住宅の寿命を延ばすためのアドバイスや、リフォームと建替えはどちらがお得なのかについても解説していきます。すでに住宅を購入された方も必見の内容です。

住宅の寿命について不安を抱えている方は、ぜひこの記事で解消してくださいね。

1.木造住宅の寿命は30年?

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よく木造住宅の寿命は30年といわれます。
実はこの30年という数字、寿命以外の理由で取り壊された木造住宅の築年数から算出されています。
つまり、木造住宅が平均30年で取り壊されるというのは事実ですが、木造住宅には30年しか住めないというわけではないのです。
住宅の耐久年数を正確に表した数字とはいえないのです。

この章では、木造住宅の寿命が30年と言われてしまう理由や構造ごとの寿命の比較、実際の寿命は何年なのかについて解説していきます。

1-1.住宅ごとの寿命の比較

日本で一番普及している戸建ての住宅は、木造住宅です。建築費用や湿気の多い日本の気候から、最も選ばれることが多い構造ですね。
ほかに一般的な構造としては、鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造が挙げられます。

各構造の平均寿命は、以下の通りになっています。

40~90年以上 鉄筋コンクリート構造(マンション含む)
30~80年程度 木造住宅
30~60年程度 鉄骨構造

参考:「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について(国土交通省)

こうして寿命を確認してみると、木造住宅では30~80年とかなりの差があることがわかります。
また、どの構造においても、設計段階の配慮や住み方によって、建物の寿命は大きく変動してしまいます。

最短の寿命で取り壊しされてしまう原因としては、リフォームよりも建替えが選ばれてしまうことが挙げられます。
これは、どの構造にも共通していえます。

最長の寿命まで延ばすためには、築年数を重ねても「取り壊す理由」のない住宅にする必要があるのです。

1-2.30年といわれてしまう理由

木造住宅の寿命が30年といわれてしまうのは、純粋な耐久年数から計算した年数ではないからと冒頭でお伝えしました。

寿命の前に取り壊されてしまう理由として、リフォームよりも建て替えが選ばれることが挙げられます。
その具体的な理由についてご紹介していきます。

1-2-1.リフォーム、メンテナンスによる契機

住宅に使用されているほとんどの設備や仕上げ材は、築30年ほどで寿命を迎えます。

どんなに住宅のメンテナンスに無関心な方であっても、不便な点がでてきたり、美観が損なわれたりすることで、リフォームや修繕の必要性を感じるのがこの時期です。

しかし、何十年もメンテナンスに無関心でいた方が、いきなりリフォームを検討しても、思い通りのリフォームができないことがあります。

修繕をすることで、修繕箇所に接している部分や構造的につながっている部分など、広い範囲に影響が出てしまうからです。
結果的に、想定以上の多額の修繕費用が必要になってしまうことがあります。

お金を掛ければいくらでも修繕をすることは可能です。
しかし、目に見えない部分に大金をつぎ込むとなると、多くの方が尻込みされます。
また、必要な修繕部分が増えていけば、当然のことながら工事費も上がっていきます。

そうなると、まだ直せば住める住宅であっても「もう建て替えた方がいいかもしれない」という気持ちが強くなります。
これは、実際に住んでいる方の気持ちだけではありません。業者にとっても、新築を勧める理由となっています。
結果として、建替えという選択肢につながるのです。

1-2-2.間取りの変更による契機

家を建ててから何十年と経てば、家族の形態も変化していきます。
そうした変化が起きたときに、より住みやすい家にするためには間取りの変更が検討されます。

特に老後の暮らしやすさを考えると、段差の解消や水廻りの位置を変更することなど、バリアフリーに配慮した住宅へのリフォームが望まれます。
これも築30年のころの住宅によく訪れる契機です。

しかし、いざリフォームを行おうとしても、配管の問題などで水廻りを移動できなかったり、取り除くことができない構造体が邪魔になったりといった問題が起こります。

これは新築時に将来的な間取りの変更まで考慮していないことが、大きな原因となります。

この場合も大金を投じればリフォームは可能なのですが、どうせお金をかけるならもっと住みやすい家にしたいと思う方が大半です。
結果として、建替えという判断につながっていきます。

1-2-3.耐震改修工事による契機

耐震改修工事が契機となり、大規模なリフォームを行うことがあります。

東日本大震災以来、世間では戸建て住宅の耐震性についての関心が高まっています。
また近年、耐震改修工事の補助金制度が全国ほとんどの自治体で整いました。
こうした背景から、耐震改修工事を検討する方が増えています。

補助金制度を利用した耐震改修工事を受ける前には、専門家による耐震診断を受け、その住宅の地震に対する強さを調査する必要があります。

その診断によって、耐震改修工事の方法や費用が決まってくるのですが、築30年以上の住まいは、現在の耐震基準に適合しない場合が多々あります。
そのため、耐震改修工事に多額の費用が必要になるケースがあるのです。

また、耐震改修工事は壁や天井を壊して行う工事が多いので、「耐震改修工事をするならリフォームも一緒にしてしまおう」という要望を持つ方が多くいます。
このために費用がさらに重なっていきます。

そして、提示された多額の見積金額から、こんなに払うなら建替えをすると方針が変わっていくのです。

1-2-4.立ち退きや災害などの外的要因

住まいの地域が都市開発のエリアと重なり、立ち退きを余儀なくされることがあります。
こういった外的要因による取り壊しは、住んでいる方のメンテナンスや、設計段階の配慮ではどうにもできないことです。

寿命という意味では、災害による倒壊も気になるところかもしれません。近年の大きな地震によって、住宅が倒壊したというニュースを目にした方も多いでしょう。
このような住宅は、古い建築基準法のもとで建築されたものが大半といえます。

現在の建築基準法の耐震基準では、最低基準に合わせて設計された住宅であっても、基本的には震度7程度の地震には耐えられます。
この耐震基準は、昭和56年の建築基準法の改定によって規定されました。

改定では、昭和53年に発生した宮城県沖地震の教訓を活かして耐震設計の基準を大幅に見直され、「新耐震基準」が設けられています。
この基準に準拠して建てられた住宅は、阪神淡路大震災でも倒壊などの被害を受けませんでした。

中古住宅などを選ぶ際は、最低でもこの建築基準法に準拠しているかかどうかに気を配ってみてください。

 

ただし、2016年4月に発生した熊本地震では、この耐震基準を満たした建物も倒壊しています。

日本建築学会九州支部の調査によれば、震度7の揺れに2度見舞われた熊本県益城町では、耐震基準を満たしていたとみられる木造住宅51棟が全壊していたことが判明しています。

震度7の地震が立て続けに発生するという事態は、現在の耐震基準でも想定されておらず、今後どうやって耐震性を確保していくかが木造住宅の新たな課題といえるでしょう。

木造住宅の寿命の視点で耐震性を考えるときのポイントは、まず新築時の地盤調査と必要な地盤補強が行われているかが重要になります。
また、建築後も耐震診断を受けたうえで適切な耐震改修工事を行ったか、強度を健全に保つためのメンテナンスを行っているかも、住宅の寿命を分ける要素といえるでしょう。

木造住宅の耐震性についてより深く知りたいという方は、「【建築士が教える】木造住宅の耐震性の基本 熊本地震での倒壊の明暗はどこに」をご覧ください。

こちらの記事では随時、調査機関の発表内容等も更新していく予定です。

1-3.実際は80年住める

それでは、木造住宅はいったい何年住むことができるのでしょうか。
結論からいうと、木造住宅の本来の寿命は約80年と言えます。

これは、構造体(骨組み・軸組・基礎)に使われる木材の耐久年数から算出しています。
適切に乾燥が保たれて、構造体に使われている木材に腐食の被害がなければ、木造住宅は80年以上経っても住むことができます。

最近では技術も向上し、100年の寿命をうたった注文住宅商品も登場しています。とくにここ10年で新築された物件については、かなりの長寿命が期待できます。

しかし、どんなに長寿命を売りにした注文住宅であっても、住んでいる人が適切なメンテナンスを行う必要があります。
きちんと手入れをしないと、建築物はその耐久性を最大限に発揮できず、短命に終わってしまうのです。

2.住宅に長く住むためのコツ

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住宅に長く住むためには、住んでいる方が適切にメンテナンスを行う必要があることをお伝えしました。
この章では、具体的にどのようなことが必要なのかを解説していきます。

2-1.まめな掃除

意外かもしれませんが、日常的な掃除がとても大切です。
特に水廻りや外周部は、日ごろから掃除をしつつ、異常はないか確認するといいですね。

水廻りで気をつけたい異常は、水漏れから起こるシミや、欠損による浸水、配管からの異臭などです。
水廻りのトラブルは、構造体の腐食などにもつながる場合がありますので、早めに対応をしたい部分です。

また、外周部のひび割れや雨樋の詰まり、敷地内の陥没なども日常的に掃除をしながら関心を持って点検すべき部分です。
外周部の異常を放置すると、健全に排水ができない、防水の機能を充分に果たせないといったトラブルが起き、構造体を傷めてしまうことがあります。

この様な建物の寿命を縮めかねない異常を早期に発見するためにも、お住まいのまめな掃除は欠かせません。
日々の生活のなかでまめな掃除ができれば、住宅自体の美観を保ちやすくなりますし、自宅への愛着も抱きやすくなりますよ。

2-2.メンテナンスとリフォーム

木造住宅の寿命を延ばすには、適切な時期に適切なメンテナンスを行うことが欠かせません。
メンテナンスの種類と必要となる時期は、以下のようになっています。目安にしてみてくださいね。

2-2-1.外壁

・外壁(壁紙)
10~15年目のあいだ、20~25年目のあいだに点検と合わせて行うべきものがあります。
まず、塗装替えです。外壁の表面を塗装し直すことで、美観や断熱性、防水性を蘇らせる効果があります。
次に、目地の打ち替えを行いましょう。サイディング(羽目板)の継ぎ目やサッシ周りなどの隙間を埋めている素材を補修することです。
この際に軒裏や雨樋などの細かい部分も一緒に点検し、必要に応じて塗装や修繕を行うとよいでしょう。
また、玄関扉やサッシ、シャッター類の点検と部品交換を行うとよいですね。
30年を目安に、壁の張替えが必要となります。

注意したいのは木部についてです。木部は腐食しやすいので、3~5年ごとを目安に塗装替えを行いましょう。

また、外壁の防水等のメンテナンスは、外周部に足場を建てる場合がほとんどです。これは、屋根やベランダについても同様です。
自分たちの工事中のストレスだけでなく、近隣への配慮などを考えると、なるべくなら一気に済ませてしまいたいですね。

・屋根
スレート:7~10年、20~25年に点検と、表面の塗装を行いましょう。葺き替えの目安は30年です。

ガルバリウム鋼板:10~15年ごとを目安に、点検と表面の塗装を行いましょう。
サビを防ぐことで美観も長持ちしますので、日常的にサビや汚れもチェックします。
特に塩害が心配な地域は、定期的に水洗いすることをおすすめします。

瓦:塗装替えの必要はありませんが、10~15年ごとを目安に点検を行いましょう。必要に応じて、下地や漆喰、欠損部などの補修を行いましょう。

・ベランダの防水
10年ごとに点検を行い、必要に応じて張替えや補修を行いましょう。
上記の「外壁」でも解説しましたが、防水メンテナンスはなるべく一気に済ませることをおすすめします。

2-2-2.内装

・クロス
張替えの目安は約10年ごとです。
ただ、汚れや傷など、美観的に問題を感じなければ、張替えは行わなくても問題ありません。

・フローリング
美観を保つためにも半年ごとにワックス掛けを行うことが理想的です。ワックスフリーの商品の場合は、ワックス掛けの必要はありません。

点検は5年ごとに行い、下地を含めた部分的な補修を行いましょう。
表面の仕上げの剥がれや割れ、踏んだ際にベコベコとたわむ、下地から軋むような音がするといった不具合を感じ始めたら、張替えを検討する時期に入ります。目安は築20年ころです。

2-2-3.水廻りの設備

・水栓やパッキン、配管

5年ごとに点検を行い、継ぎ目からの水漏れや汚れの蓄積、配管の割れ、劣化といった不具合から、交換の必要性があるかを確認します。
10年~20年で、水栓器具本体や配管は寿命を迎えます。

・キッチン
10~20年を目安に、加熱機器や食器洗浄機が寿命を迎えます。
本体、扉、天板などの部分的な交換は、15年程度で検討しましょう。

・洗面化粧台
15年~25年を目安に、本体の交換が必要になります。

・便器
10~15年で温水便座の交換、20年~30年を目安に便器の交換を行いましょう。

トイレリフォームについては、「トイレのリフォーム費用をプロが解説! ズバリ相場はいくら?」を参考にしてみてください。

・ユニットバス
20年を目安に、必要に応じて取替えましょう。

・給湯器
7~15年で寿命を迎えますので、交換を行いましょう。

2-2-4.その他

・防蟻対策、処理
シロアリ対策として、土台・大引き(床組の重要な部材)などの1階床下の木材に、薬剤を散布します。
5年ごとに点検を行い、必要に応じて処理しましょう。

2-3.メンテナンスを見据えた居住計画

30年の寿命の壁を乗り越えるためには、設計段階から長く住める家づくりを心がけることがとても重要です。
1-2-2.間取りの変更による契機」で紹介したように、ライフスタイルの変化から間取りを変えたいと思うのは自然なことなのです。

また、新築の際には長く住める間取りを考えるとともに、メンテナンス性にも配慮した計画を立てておきましょう。

間取りについては、「プロが教える住宅間取りの基本(5つの間取り図付き!)」も参考にしてみてくださいね。

2-3-1.長く住める間取りのポイント

・住み心地の良い、快適な土地(不動産)を見つける

・10年、20年、30年後の健康状態や家族形態を予想した間取りを考える

・部屋の形状はどのような用途でも使いやすい構造を心がける

・段差をつくらない(バリアフリー)

・長年住み継ぐことのできるデザインを心がける
(雨漏りしにくい屋根形状や軒の出の確保などを心がける。また、偏ったデザインは避ける)

※「プロが教える住宅間取りの基本(5つの間取り図付き!)」の「間取りを考える上で押さえたいポイント5選」と「失敗しがちな間取り5選」も、あわせてチェックしてみてください。

2-3-2.メンテナンスを行いやすい間取りのポイント

・床、天井、壁には、メンテナンス時に壊す必要のないよう、人が入ったり覗いたりできる出入り口(点検口)をつける。

・排水管はパイプスペース(下水道や、ガス管などの配管スペース)を設けて、一箇所にまとめる

・給排水や電気の配管・配線は、将来的なリフォームを想定して、必要になりそうな部分にも配管や配線をしておく
※具体的にどのようにしたら良いか悩まれた場合は、間取り検討時に設計士に相談し、提案してもらうと良いでしょう。

3.リフォームと建替えはどちらがお得?

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ここまで、木造住宅の寿命を延ばすために気をつけるべきことをお伝えしてきましたが、実際には住宅の大規模な改修を迫られることもあるかと思います。
そうなったとき、リフォームと新築では、どちらがお得といえるのでしょうか。
実際に費用の概算を比較し、検討してみましょう。

ここでは築30年の住宅について、全面リフォームと建替えを比較してみます。
なお、費用については概算ですのでご了承ください。

・建替え

約15万円引越し費用(往復・閑散期)約500万円諸費用(式祭、登記、カーテン、家具、外構工事、税金等)

約200万円 既存住宅解体費
約1650万円 新築工事費(木造2階建て在来軸組み工法30坪程度)
約50万円 仮住まい費用(2DK・首都圏、5ヶ月間)

=総額 約2415万円

・全面リフォーム(耐震改修・間取りの変更は行わない)
内容:外壁塗装替え、屋根張替え、外周部各所補修、水廻り設備機器取替え、クロス全面張替え、床各所補修、配管各所補修、防蟻工事

約100万円諸費用(カーテン、家具等)

約1200万円 工事費
約30万円 仮住まい費用(2DK・首都圏、3ヶ月間)
約15万円 引越し費用(往復・閑散期)

=総額 約1345万円
※全面リフォームの場合は住みながらの工事が可能ですので、引越しや仮住まいを用意せずに済むことがあります。
ただし、住みながらのリフォームは住んでいる方にとって、かなりのストレスになります。
やはり、仮住まいは用意したほうがよいでしょう。

費用面で見ると、リフォームの方がお金を掛けずに済むことがわかります。
ただし、「1-2.30年といわれてしまう理由」でご紹介したとおり、リフォームは蓋を開けてみないとわからないことがあります。
その結果によっては、金額は大きく変動してしまいます。

また、適切な時期に点検やメンテナンスを行っていると、その時々の状態から将来的に必要になりそうな工事を前もって知ることができます。
将来的に必要となるリフォームに必要な費用をあらかじめ明確にできるというわけです。

4.まとめ

木造住宅の寿命が30年というのは、決して間違いではありません。
住んでいる方の心がけがなければ、住宅の寿命はどんどん短くなっていきます。

そしていざ、住宅の建て替えの時期が来たとき、新築とリフォームの決断に関しては、費用の面だけでは判断しきれない難しさがあります。
家に対する愛着やそのときの家族の状況、法令の関係といった住まいを取り巻く環境も、決断に影響を与えることになるでしょう。

これから新築をされる方は、耐久性にこだわった計画を立ててみてください。
中古住宅を購入される方は、メンテナンスのし易さに重点を置いて購入を考えてみてください。
皆さんが愛着を持って手入れをした木造住宅と長い付き合いができますことを願っております。